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越境者
越境者

越境者
海を越えた天安門事件

発売日:1992年10月01日

森田靖郎著

ISBN:978-4-87919-538-8 / C1036 / 四六判上製 / 256頁

定価1923円(税込)

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日本に越境する中国人のハイジャック犯・張振海の生活、思想的背景は?天安門事件の首謀者たちへのインタビューを通して事件の真相に迫る。


政治亡命 天安門から日本へ 1989年12月16日の中国人ハイジャック犯・張振海は、日本への政治亡命を求めたが強制送還された。日中政治の暗部と越境に至るまでの足跡を追いながら、天安門以後中国のホットな政治・社会の現状をレポートする。 そこから、天安門事件の舞台裏がしだいに明らかになってくる。 天安門事件クーデター説の登場 たび重なる天安門事件首謀者たちへのインタビューによって。ようやく事件の核心が見えてきた時、「天安門事件はクーデタだった」とする改革派幹部の意外な証言が飛び出した……。


プロローグ

日本人にとっての「天安門事件」/ハイジャック犯に訴えられた日本政府/「金と自由」=ホンネを求める中国人/反体制派に祖国復帰を訴えるとう小平/「人権なき国家」に目覚める市民たち

I=海を越えた天安門事件

邯鄲の町/ハイジャック犯の生いたち/犯人引き渡し審査/ハイジャック第一報/ハイジャックされた中国民航機981便/滑走路へつき落されたハイジャック犯/日本に上陸した天安門事件/機長のハイジャック報告

II=ハイジャック犯・張振海という男

政治亡命が目的/妻の供述/「保釈中の横領犯」と主張する中国/死刑にしてから送還してほしい/張振海が心を打ち明けていた法務教官

III=パリから届いたアリバイ証明

張振海は労働者糾察隊として天安門にいた/パリのウアルカイシ/中国政府が仕かけた先制攻撃/パリのアリバイ証言者/張は労働者糾察隊の隊長の腕章をしていた

IV=ニューヨーク亡命者たちの隠れ家

民主化運動の原点“北京の春”/ニューヨークの亡命者/天安門事件の黒幕の地下組織/ニューヨーク・チャイナタウンの非合法地区

V=東京裁判

はじまった張振海の引き渡し審査/検察側の張への反対尋問/張振海の政治性を否定した工自連幹部の供述証拠/民主活動家たちのもうひとつの天安門事件/証言台に立った岳武/審理されたテレビの岳武インタビュー/政治決着、張振海を引渡し

VI=フリー・ボート・トゥ・チャイナ

“民主の女神号”台湾沖、波高し/ドラゴンの末裔/血の日曜日、空白の数分間を知る目撃者/侯徳健の台中往復亡命/国籍不明の漁船に狙われる“民主の女神号”/海賊放送を禁止された女神号/放送機材なき放送船/女神号に異常な反応を示した中国政府/影で操られていたチャイナ・ボート作戦/女神号と天安門事件の女闘士柴玲を結ぶ点と線

VII=消えていた張振海の足跡

ハイジャック犯の実家・邯鄲、現場検証の旅/奪われた都市戸籍/公金横領/張振海の反論/賄賂を使って釈放された/消えていた政治犯・張振海/張振海の政治不在証明/張の勤務評定/ハイジャック直前、張一家の足取り/北京工自連のリーダーは張を知らないと証言/糾察隊のリーダー劉煥文/妻は共犯を否定、張は北京にいなかったと証言/夫は冤罪から逃げるためにハイジャックした/夫は天安門事件の時、家でテレビを見ていた/ミャンマー国境にて/台湾密入国最前線へ

VIII=反撃にでた中国人の人権

天皇訪中は人質外交?/日本は人権無視国家だから犯人を引き渡してほしい/中国人にとって人権とは/張振海を難民不認定とした行政/動き出した人権活動/張振海の三カ月前に政治亡命を求めた女性がいた

IX=共産主義を捨てる中国人

越境する流民たち/天安門事件の真相を語る趙紫陽の筆頚ブレーン/火薬庫にマッチを投げ込んだ胡燿邦の死/とう小平は趙紫陽に「ひとを殺せばいい」と一言だけ答えた/天安門事件直前にとう小平の息子に電話/密出国の船底で失神しそうになりながら脱出/趙紫陽はなぜエリツィンになれなかったのか

エピローグ――第二の張振海、偽装難民・林桂珍の場合

張振海事件に先立つ政治亡命事件/天安門事件に連座して難民船で日本へ/ふたつの亡命事件と裁判が残した「人権」問題

あとがき